「……まこと…なのですか?」
松姫は震えを帯びた声で伺った。
「まことに…、信忠様は…」
その悲しみの溢れる問いに、与次も深刻そうに首を前に振る。https://plaza.rakuten.co.jp/carinacyril786/diary/202409270000/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/e57db139eab0c751598c38da165214e0 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/10/09/185533?_gl=1*6r4v4x*_gcl_au*MTY1Nzk5NjI1Ni4xNzI3NDMyMzI5
「某も、最初に伺った時は、あまりの話にこの身が震え申した。──されど、全て事実にございます。
特に信忠様はまだ二十六歳というお若さ。織田家御当主として頭角を現されようという時に…。まことにご無念にございます」
改めて聞く訃報に、松姫は青い顔をして、人のように
衝撃が強過ぎて、もはや涙も出ない。
まるで冷たい沼の底にでも引きずり込まれたような虚脱感に襲われ、松姫は動くことすら出来なかった。
「既に織田家の御一門、家臣団にも謀反の一件が伝えられ、避難する者、上様の仇を討つために駆け戻る者など、皆様方も大わらわにございまする。
…ただ、一つだけ幸いなことは、だに信長公の亡骸も、信忠公の亡骸も、共に見つかっていないことにございましょうか」
信長を討ったという確かながなく、明智は今ごろ四苦八苦の体であろうと、
与次は小気味良さげに言ったが、今の松姫には何の慰めにもならなかった。
「長谷川殿。ならば私共は、この先 に致せば…?」
水篠が不安の面持ちで訊くと
「もはや京へ向かうことは叶いませぬ。…このまま、武蔵の国へお引き返し下さいませ」
与次はもう片方のも地について、して述べた。
「ではせめて、織田家の誰ぞに……そうじゃ、信忠様のご養母であられる御台所のお濃様に、お取り次ぎ下さいませぬか?
信忠様からのお文にも、お濃様が姫様に会いたがっているが記されておりました。お濃様ならば、きっと松姫様を──」
「それは難しゅうございましょう。今頃は安土の城へも報が入り、奥向きの皆様方も大いに動揺なされているはず」
元より濃姫が本能寺へ随行したことを知らない与次は、とても対面出来るような状況ではなかろうと、かぶりを振った。
「それに、松姫様を “ 無事に武蔵の国へ送り届けよ ” というのが、信忠様からのご命令…いえ、ごにございます。決して無下には出来ませぬ」
信忠の遺志とまで言われては水篠も返す言葉がなく、口惜しそうに黙り込んだ。
「途中までは、某もに付いてお供致します故──さ、早よう、お引き返しのお支度を」
与次にされ、水篠は最後に「姫様…」と声をかけたが、輿の中から松姫の返答はなかった。
水篠はもはやす術もなく、与次の言う通りに、輿の向きを反転させる他なかった。
戻りゆく松姫の輿は、まるで嫁入り行列のような華やかさから一転、葬列のような静けさに満ちていた。
誰もがとした面持ちになり、松姫の輿のすぐらに付く水篠も、
のように細かい皺が浮かぶ面差しに、濃い悲壮感を漂わせていた。
重苦しい空気の中、行列が二町ほど進んだ時
「……あぁ…、ああああッ!」
突として輿の中から、絶叫のような松姫のが漏れた。
誰もが輿をみたが、松姫に声をかけようとする者は一人もいなかった。
今の松姫の心情は誰もが分かり切っている。
水篠も、思うままに泣かせてあげるのが一番良いと思い、あえてめようとはしなかった。
「……信忠様…、信忠様ぁ…」
輿の中の松姫は、空虚で冷たくなった胸を押さえながら、とめどなく涙を流している。
悲壮な