──その夜。 安土城の広間では、上段の信長を中心に、柴田勝家、丹羽長秀、池田、羽柴秀吉、 そして明智光秀ら、だった家臣たちが集まって、武田氏を滅ぼした祝宴をしていた。 目の前に並ぶ豪華な食膳と酒に舌鼓を打ちながら、男たちは口々に祝いの言葉を述べたり、 誰となく舞や唄の余興を披露するなど、派手な盛り上がりを見せていた。 そんな広間の前庭には、朱塗りの台にが取り付けられた、即席の能舞台がけられており、 その周囲では、坊丸、力丸ら御小姓たちが、を灯したり、 楽器や小道具を用意したりと、実に慌ただしく動き回っていた。 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202408030003/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/afccbf0f0baef3809b998c661813c04a https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/08/03/205051?_gl=1*1a7eg9u*_gcl_au*MTY2OTkwNTc4OC4xNzE4OTcyMTIz の準備を済ませると、力丸は広間の隣室へと走り行き 「──申し上げます。兄上、舞台の仕度が整いましてございます」 と、越しに告げた。 部屋の中にいた蘭丸は「分かった」と返事をすると 「これでよろしゅうございます。上様に負けず劣らず、実にご立派なおで立ちにございまする」 の能衣装に身を包んだ信忠に、笑んで頭を垂れた。 「父上様が昔 着ていた物を貸していただいたのじゃが、そのものじゃな」 信忠は両腕を広げながら、派手な色の袖を大きくひらめかせた。 「手伝わせて済まぬな、蘭丸。 父上様に何か余興をせよと言われ、以外に適当なものが思い付かんでのう」 「滅相もございませぬ。 …本来ならば、胡蝶様と共にご挨拶申し上げねばならぬところを、 務めが立て込み、今に至るまでおめもじすることも叶いませんでした。どうぞ、お許し下さいませ」 低頭する蘭丸を見下ろしながら、信忠は小さくな奴よのう。 ──左様なそなただからこそ、父上様も胡蝶をそなたにしたのやも知れぬな」 「 ─? 」 「蘭丸。妹を、胡蝶を頼んだぞ」 信忠の言葉に、蘭丸はゆっくりと鎌首をもたげた。 「胡蝶にはそなたの支えが必要じゃ。これからも、あの子の側にいてやってくれ」 「…信忠様」 「これまで胡蝶を守るのは、儂や父上様の役目であったが、これからは夫となるそなたの役目じゃ」 信忠は頼もしげに蘭丸を見つめると 「儂は儂で、迎えに行かなけれならぬお方がおる故な。妹の世話ばかりを焼いてはおられぬのだ」 そう冗談混じりに言い、にっと白い歯を見せた。 相手のその砕けた様に、蘭丸の心も僅かにんだのか 「…左様であれば、従わざるを得ませぬ。密事とは申せ、様となられるお方の仰せでございますから」 その端整な面差しに、親しみのこもった微笑を浮かべた。 「儂がそなたのに……。はははは、それは良い。これまでいる妹たちを介して、 様々な大名らの義兄となって参ったが、そなたの義兄になるほど愉快なことはないのう」 信忠が思わず高笑いし、蘭丸がはにかみがちにいていた、その時。 ──ガッシャーン!! 隣の広間から、勢いよく食膳をひっくり返したような、大きな音が響いて来た。 それと同時に 「何じゃと!? 今何と申した!?もう一度 言うてみよ!」 甲高い信長の怒声までも響いてきた為、隣室にいる信忠も蘭丸も、思わず息をんだ。 「…今のは何だ…。父上様のお声か?」 「かと思いまする。あちらの様子を見て参りましょう」 蘭丸は低頭し、速やかに広間へと移動した。 襖の開け放たれた広間の入口では、坊丸が焦り顔で控えており、 横の廊下から蘭丸がやって来るのに気付いて、慌てて一礼を垂れた。 「…兄上」 「坊丸、いったい何の騒ぎだ !?」 「それが…、