「ならば、そのお気持ちをお大切になされませ。いずれ明智殿にも──」
と話していた時
「 ! し、失礼…」
秀貞は急に口に手を当て、みになりながらゴホッゴホッと咳き込み始めた。
やがて「ゔ!」とのような声を漏らした秀貞の口から、
っている手の間を突き抜けて、赤黒い血がぽたぽたとり落ちた。
濃姫は一驚し、思わず腰を浮かせる。
「──林殿。そなた、まさか…!」
秀貞はの表情を浮かべながら、胸元から取り出した懐紙で素早く口元をうと
「いやはや…、肺の病の進行が、某が思うていたよりもずっと早く…、まことに驚き入り申した」
そう述べながら、弱々しくんだ。
「御台様……この織田家に半生をげた、老いれへの、最後の情けと思うてお聞き入れ下さい」
「──」
「どうかこのことは、上様にも、他の誰にも申して下さいまするな。 …と定めたの地で、
誰にも悲しがられることも、迷惑をかけることもなく、ただひっそりと、己の生涯を終えたいのでございます」
「…林殿…」
「禍根を残さず、後腐れなく亡くなることが、某が最後に出来る、上様へのご恩返しでもあるのです」
どうかお聞き入れ下さいませと、秀貞はそれはしく頭を垂れた。
彼が、わざわざ安土城へ忍んでやって来たのは、移住の挨拶ではなく、
かつての主君にの別れ告げるためだったのだと、濃姫はそこで初めて気が付いた。
驚き、悲しみ、慈愛と、様々な感情がわき上がり、濃姫はいつの間にか涙ぐんでいた。
秀貞の、座を退いても変わらぬ信長への忠義心に、心打たれたのかも知れない。
【生髮維他命】維他命補充品真的有助改善脫髮嗎? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::
「……分かりました…。それがあなた様のお望みであれば、上様には黙っておきましょう」
「のう存じます」
「その代わり、一つ、約束して下さいませ」
「 ? 」
「どうか、最後まで、生きることを諦めないで下され。 …例え己の死期を察していたとしても、
この後も療養に尽くし、一日でも長ごう生きられるよう、あなた様なりにいて下さいませ」
「御台様…」
「上様はこれまで、何十、何百という家臣をにて失われ、時にはその死に涙を流されることもあられた。
死することではなく、一日でも長く生き続けることが、上様へのまことの忠義であると、左様にし召されませ」
濃姫は優しく、囁くように告げた。
秀貞は目頭を熱くし、の涙を流しながら
「……はい、…はい…御台様…」
と何度も頷くのだった。
そんな同日の夜。
光秀や秀貞の件もあり、心波立っていた濃姫に、思いがけず嬉しい出来事があった。
安土城の一室で、信長の晩酌の相手をしていた濃姫は、パッと顔を輝かせる。
「上様──それはまことにございますか !?」
「ああ。儂がこの日の本を離れる前に、済ませておきたいと思うてな」
「それは、実に素晴らしきお考えにございまする」
濃姫が手にしていたを置き、一礼の姿勢を取っていると
「──上様、り越しましてございます」
ふいに部屋の外から蘭丸の声が響いた。
「儂が呼んだのじゃ。申すなら早い方が良いと思うてな。……構わぬ、入れ」
信長が入室を許すと、蘭丸は閉ざれていた戸襖を開き、静かに部屋の中へと入って来た。
「よう参った。へなおれ」
「失礼つかまつります」
蘭丸は夫妻の前に控え、深々と頭を垂れる。
「お呼びでございましょうか?」
「ああ。はそちに、良い話がある」
蘭丸は軽く眉をひそめながら、すっと鎌首をもたげた。
「そなたと胡蝶とのことじゃ」
「胡蝶様…いえ、姫様とのことで、何か不手際がございましたでしょうか?」
「そうではない。 ──その、胡蝶とはここ一年あまりで、だいぶ