「なにやってんだ、おめぇは。まったく、さわがしいやつだ」
眉間に皺をよせ、こちらにむかってくる副長。俊冬が、一緒である。
「兄上、トピ主とは、なんでしょうな」
「下船の準備は、
できておる。下船後、「で、こっちをみる榎本。
「あなたの叔父上のことは、存じておりますので」
web上で、と心中で付け足す。
会ったことないが、会いたいとは思っている。
「とても柔軟で、活発な方ですよね」
「ああ・・・。それが奇妙奇天烈ってんなら、そのとおりだ」
思わず、笑ってしまう。一本、取られてしまった。
「それで、榎本殿の叔父上とは、いったい・・・」
副長とをかわしつつ、おずおずと尋ねる局長。
「局長も副長も、ご存じの方です。の屯所にもきてくださいました。残念ながら、そのとき、おれはいませんでしたが」
「法眼、松本法眼か?」
両長が、叫ぶ。
「そら、下船開始だ。近藤さん、しりあえてよかった。今後の健闘を、祈ってますよ」
「おいおい肥田さん、またそんなこといって・・・」
肥田が局長を激励するのをきき、榎本のが一瞬にして暗くなってしまう。
「釜次郎、わたしにできるだけのことはやった。韮山代官は、すでに今後のことを決している。わたしも、これがぎりぎりなのだ。古なじみのおぬしにできる、最後の協力。すでに、話はついているはず」
あいかわらず、肥田は、全身真っ黒である。苦笑らしきものが浮かぶ。
局長と握手するために掌をだしかけ、それもまた真っ黒なことに気が付く。
ズボンでこするも、よりいっそう黒くなる。
「肥田さん、お世話になり申した。「富士山丸」は、じつにいいですな。そして、あなたは、とてもいい船乗りです」
局長はにっこり笑いつつ、肥田の真っ黒な掌をとり、ぶんぶんふる。
でた、局長マジック!
「近藤さん・・・。それは最高の誉め言葉だ」
肥田、落ちる。
「土方君、またともに呑みにゆこうじゃねぇか。いい店をしって・・・」
「なにいってる?一度たりとも、ともに呑んじゃいねぇ。誤解されるようなこと、いわねぇでくれ」
副長と榎本・・・。
榎本は、おねぇとは別の意味で副長に絡んでくる。しかも、おねぇと同様、こりず、しつこい。
ここにおねぇがあらわれたら、どんなドロドロの構図になるのかと、一瞬、想像してしまう。
新撰組は、江戸に帰還した。それが正しい表現かどうかはわからないが、兎に角、無事、江戸の地を踏みしめることができた。
しっかりと、踏みしめることが・・・。「釜屋」は、もともと茶屋であった。
いや、いかがわしいものではない。旅人が休息するほうの、である。それが、宿屋になった。
「釜屋」は、幕府御用達である。
南品川に位置し、現在ではそこは、マンションが建っている。その一画に、案内板がある。
新撰組の定宿で、京から出張にきたときに宿泊している。
田舎から都会にでてきたおのぼりさんよろしく、あるきながら周囲をみまわしてしまう。
気のせいかもしれないが、雰囲気がちがう。
景色、 局長と副長は、どことなくうれしそうである。
遠征からホームグラウンドに戻ってきた、プロ野球選手のようである。
「釜屋」で、先行している永倉らと再会する。
局長は、そのすぐあとに西洋医学所にゆく。肩の傷を、診てみてもらうためである。
「おおっ!みな、元気そうだ」
局長は、みなと再会すると、おおきく分厚い掌で一人一人の肩をばんばん叩きまくって喜んでいる。
数日しかはなれていなかったのに、再会にこれほどうれしそうにしている。
だが、それは局長だけではない。おれ自身もである。
副長は、口ではかわいくないことをいっているが、はやさしく、うれしそうである。
局長は、ひとしきり再会を喜んだのち、西洋医学所へむかった。
そこでしばらく療養するらしい。
副長が局長を送って西洋医学所より戻ってきたのは、夕餉のあとであった。