「明日は一日、好きにしていい。俊冬、俊春・・・」
夕餉ののち、副長の部屋に集まったおれたちに、副長が告げる。
「釜屋」は、
大坂の船宿「京屋忠兵衛」よりおおきい。
子どもらは大部屋であるが、隊士たちは二人で一室。
幹部は、ちいさいが個室である。
副長は、十畳くらいの部屋を独占している。
「おまかせを。江戸城にまいり、幕閣に根回しをいたします。同時に、武器などの装備も・・・」
副長がみなまでいわずとも、心得ている。
俊冬はそう応じ、俊春とともに頭を下げる。
二人のの傷は、いまだとんでもない状態である。とくに俊春のそれは、二度見、三度見したくなるほどホラー化している。
「喧嘩は、兄貴のほうが強いのか?」
よほど我慢できなかったのであろう。尋ねるというよりかは、独り言のように、原田がつぶやく。
「どちらが強くてもいいではないか、左之さん。わたしたちも、昔はよくやったものだ。しかも、くだらぬことで」
斎藤である。さわやかな笑みでいう。
そういえば、局長がそういっていたのを思いだす。
「年下や弟というのは、喧嘩も気をつかう。総司や平助と、いつも気をつかったものだ」
さらに、さわやかな笑みでつけたす。
「ちょっとまて、斎藤。いまのだと、年少がわざと年長に負けてやってるって、いってるようなもんだ」
「えっ、そうだったのか?またまたぁ・・・。どうかんがえたって、おまえら三人、喧嘩のしかたをわかっちゃいなかった」
永倉、それから原田は、年長者の余裕の笑みとともに反論する。
ちいさな庭で、相棒がお座りしてこちらをみている。
夕餉に、沢庵がちゃんと添えられていた。相棒は、お殿様的にご満悦である。
もちろん、沢庵好きののほうも、すばらし句でもひねりださんばかりに、ご満悦であった。
斎藤は無言のまま、さわやかな、というよりかは不敵な笑みを浮かべる。
それがまた挑発的で、永倉も原田もかちんときたようである。
「いつもだったら、源さんの一喝が飛ぶところだな」
が、永倉が、気を取り直したようにつぶやく。
そのぽつり感が、井上の存在のありがたさをつくづく感じさせる。
「ああ?わかってんなら、くだらねぇことで幹部三人、いいあってんじゃねぇ。自覚してくれ。幹部は、もうおめぇらだけだ。局長も、強がっちゃいるが傷が思わしくねぇ。は、これからが正念場だ。おめぇらが、もっとしっかりしてくれなきゃな」
いつもだったら、井上だけでなく、「やめねぇか、おめぇらっ!」と、副長の一喝も飛ぶシーンである。だが、その副長は、冷静な態度である。
三人は、を畳のうえに落とし、副長の言葉をおとなしくきいている。
それぞれが、思うところがあるはず。
どうしても、これから、この三人の幹部も一人になってしまう。、この三人の幹部も一人になってしまう。
をあげる、永倉と原田。
「ですが、それは年長者や兄もおなじ道理でしょう?非があろうとなかろうと、相手をやりこめるというよりかは、自身の気持ちをぶつけたい。それが、なにゆえ本気になれましょう。言葉にできぬ気持ち、想いのあらわれ。甘え、わがまま・・・。それらが、多少すぎた表現になるだけ。殴りあいの喧嘩も、たまにはいいものです」
沈黙が、室内を満たす。
しかし、俊春が、ふんと鼻をならす。の形がかわるかと思うほど殴られてばかりです」
そして、ぼそっとつぶやく。
刹那、俊冬の掌が、超神速で俊春の後頭部をはる。
みなが唖然とみまもるなか、俊春の
「ご高説、結構でございますな、兄上?そのたまのすぎた表現で、わたしはいつも、。あきらめよ」
不敵に笑う俊冬。いじける俊春。
思わず、ふきだしてしまう。すると、みな、いっせいに笑う。
「俊冬、おれと殴り合いの喧嘩、やってみるか?」
副長が、意外なことをもちかける。
「これは異なことを。する理由がありませぬ。たとえ、する理由があったとて、わたしはけっしてあなたとはいたしませぬ。さきほどのは、常人の話。あなたは、わたしと殴りあいの喧嘩をすれば、あらゆる