「なれど、私にとっての何よりの土産は、蘭丸様が道中ご無事で、何事もなくこの安土の城へお戻り下さること──。それを、お忘れ下さいますな」 相手の目をしかと見据え、な口調で告げた。 蘭丸も笑顔でそれに応える。 「ご安心下さいませ。此度は出陣と申しても、戦闘は羽柴様や援軍の明智様方にお任せになられ、 上様はその首尾を見届けに参るだけにございます故、上様のお側におわす某に、大事など起ころうはずがございませぬ」 笑ってかぶりを振る蘭丸に、胡蝶は「左様にございましたか」と、得心したように頷いた。 「備中へ向かう途上で茶会をすとは、えらく悠長なご出陣だと思うておりましたが…、そういうご事情にございましたか」 【生髮】維新烏絲素有無效?成分、副作用一覽!「はい。故に明日も、我ら小姓衆十数名と、警護の者のみを連れた身軽な出立になるようで、もいつもより気楽に構えておりまする」 「それを聞いて致しました。 ──では私も、安んじて蘭丸様のお帰りをお待ち申し上げておりまする」 胡蝶が端然と一礼を垂れると、蘭丸も頷くように頭を下げた。 「某が帰って参ったら、婚儀の事、我らの行く末の事を、改めて話し合いましょう」 「行く末…?」 「になれば、その、色々とありますから。これからの暮らし向きの事や、二人の生き方………のことなど」 「お、御子っ」 突として飛び出したその二文字を聞き、胡蝶は目を真ん丸にした。 考えたこともなかった。 誰かの妻になることだけでも、自分にとっては一大事なのに、子供とは…。 ろ、自分自身がまだ子供だと思っていた為、その辺りのことに考えが及ばなかったのかも知れない。 だが胡蝶も来年には十五歳になる。 夫君とを共にし、子を身籠ったとておかしくない年齢である。 しかし、良いのであろうか。 表の世へは一切 出られない自分が、御子の母になるなど。 元より、丈夫に生んでやることが出来るであろうか? 自分のように障害を持って生まれて来たらどうしようか? たった数秒の間に、胡蝶が目まぐるしくそんなことを考えていると 「ご案じなされますな。今すぐという訳ではございませぬ。いずれ、く行くはのお話にございます」 蘭丸は優しい声色で告げた。 「何も急ぐ必要はありませぬ。二人で、一つ一つ成して参りましょう」 「蘭丸様」 「申し上げましたでしょう? 胡蝶様と一緒にいられるだけで幸せなのだと。ですから、今はこのままで良いのです」 端麗な蘭丸の面差しに、涼やかな微笑が浮かんだ。 その笑みを見つめる内、胡蝶の心の中の戸惑いがとなって消え失せ、 代わりに、ぬるま湯のように心地よい感情が、心中をゆっくりと浸していった。 蘭丸はもう既に、自分との未来をそこまで考えてくれている。 その事実が、胡蝶には何よりも嬉しかった。 気が付いた時には蘭丸の胸の中に飛び込み、右腕を彼の背に回していた。 「…どんなにお身軽なご出立でも、必ずしも平穏な道のりばかりとは限りませぬ。 どうぞ道中は、くれぐれもお気をつけて。無事に安土へ戻って来て下さいませ」 「姫様」 「戻って参ったら必ず、先々のことについて二人で話し合いましょう。約束ですよ」 胡蝶の頭の上でそれを聞きながら、蘭丸は静かに微笑むと 「ええ、必ず──お約束致します」 胡蝶の背に腕を回し、な彼女の体を、そっと引き寄せるのだった。 一方 濃姫のでは、人払いされた広い部屋の中で、濃姫とお菜津が距離をとって相対していた。 部屋の端には齋の局と