明くる日も明くる日も雪は止まない。この数日の間に、何も知らない桜花に対して藤はの灯し方といった基本的な生活用具の使い方などを教え込んだ。
自身の置かれた状況を今ひとつ把握しきれていない桜花は、まるで体験学習のようだと呑気に思いながら覚えていく。その甲斐あってか、大体の勝手は分かるようになっていた。
ある日、https://plaza.rakuten.co.jp/carinacyril786/diary/202310260000/ https://ameblo.jp/carinacyril786/entry-12826021489.html https://www.liveinternet.ru/users/carinacyril786/post501699228// ふと床の間に飾られている太刀が目に入る。のそれは魅入られるような禍々しさを感じさせた。これは本物だろうか、と思いつつ好奇心に抗えず、惹き付けられるようにそれへ手を伸ばす。
柄に触れた途端、まるで全身を電流が駆け巡ったかのような鋭い感覚に目を見開いた。
『死にたくない、まだやり残したことが……』
呻き声のようなものが頭に響く。この世のものとは思えないそれにぞくりと背筋は凍り、肌が粟立った。
「いやっ、」
思わず手にしたそれを畳の上へ落としてしまう。その音を聞き付けたのか、藤がやってきた。
「桜花、どうしたの。……刀に触れたのかい?」
「ご、ごめんなさ……、気になってしまって。触った途端に変な声が聞こえたんです」
藤は太刀を拾い上げると、震える桜花の前へ座る。
「変な声……?」
だが藤が触れても何も起こらなかった。悪い夢でも見たのかと思いつつ、手のひらを見詰める。
「夢、そうだ……。あの声は夢でも出てきたことがあった……。嫌、折角忘れていたのに」
まるで身体の芯から暴くようなその声には覚えがあった。幼い頃から繰り返し見てきた、両親から見捨てられる切っ掛けとなったあの夢の声である。
小さな声で恐怖にく桜花へ、藤は太刀を再度差し出した。
「刀は思念体だ……。もし刀の声が聞こえたというのなら、桜花は選ばれたのかもしれないね。もう一度触れてごらん、きっと大丈夫だから」
その促しは何処か心地よい。まるで母に諭されているような感覚に包まれた。少しの躊躇いの後に、桜花はおずおずと太刀へ手を伸ばす。先程と同じように柄に触れた。
すると、不思議なことに先程まで感じていた恐怖がすうっと消えていく。まるで吸い取られたかのように何も無かった。それに驚きを隠せずにいると、藤は柔和な笑みを浮かべて桜花と視線を合わせる。
「刀は身を守るものだからね。きっと桜花を守ろうとしてくれるはずさ」
その時、脳裏に一瞬だけ藤に良く似た若い女性が浮かんでは消えた。その女性が藤に重なる。
「天候が落ち着いたら、山を降りるのだろう。その刀は桜花へあげる。俗世を捨てた老い行く私が持っていても宝の持ち腐れさね。それはといって、古来から伝わる妖刀なんだ」
呆然と太刀を両手で持つ桜花の頭を撫でると、藤は一方的に言い残して別の部屋へ向かった。
その夜、高杉は縁側に座りながら雪見酒をしていた。試合以来、何となく高杉への抵抗が消えた桜花はその横で言われるがまま酌をしている。
何か思うことがあるのだろうか、高杉は酒だけをひたすら煽り、無言で空を眺めていた。
「……もう疲れたのう。このまま何処かへ逃げてしまおうか。それともここで死ぬのもええかも知れんのう」
この明るさだけが取り柄のような男から、気弱な発言が聞かれたことに桜花は目を丸くする。
「何もかもままならん。このまま京へ向かったとて、何が変わるんじゃろうか。それならいっそのこと、」
一気に酒を飲み干すと、空になった盃を桜花へ向けた。早く次をつげと言いたいのだろう。だが、桜花は銚子を傾けずに、ただ高杉の横顔を見詰めた。
「……何があったか知りませんが、それで良いんですか」
高杉は赤ら顔ながらも、炯々とした鋭い眼光を桜花へ向ける。いつでもその腰の刀で人を斬り殺せるような酷薄さすら感じ、無意識のうちに桜花は身震いした。だが、毅然とした表情を崩さない。
「何……?君は