• しばらくの間二人は離れて歩

     しばらくの間二人は離れて歩いていたが、人通りが無くなった頃合を図って距離を縮めた。  先に口を開いたのは与三郎である。 「……直に戦が起こるかも知れんそうですね」  その言葉に、桜司郎は目を丸くして立ち止まった。そして後ろを歩く与三郎を見やる。 「もう知っていたんですか」 「あくまでも噂ですけえ。……やけど、その反応を見るとほんまなんですね。金を持っとる商人なんかは荷造りしちょるらしいです」  戦だと言うのに、まるで驚きも恐れもしない。興味が無いのだと言わんばかりに淡々としていた。その姿を見て、桜司郎は再度足を進める。 「……まだ確実では無いようですが。起こると思って良いのだと思いますよ。https://carinacyril786.pixnet.net/blog/post/122410870  http://carinacyril786.e-monsite.com/blog/--8.html  https://www.evernote.com/shard/s729/sh/847f7daf-d30e-7172-96b7-b866e6298089/BaX96o7SXa0BN5o_TIRdkkeQ741dWtgdvkCSR9Nk7DRMHMk_JVeLERsyOg 今日は知り合いに別れを告げるために、こうして回っているんです」  元々足場の悪いそこだったが、雪で更にぬかるんでいた。だが何の支えも無しにスイスイと登れている自分がいる。それこそ、高杉と共に下山した時は酷いものだったと桜司郎は淡い笑みを浮かべた。 「……貴女も戦に出るのです?」 「はい、そのつもりです……」 「ほうか、ええんやないですか」  即答である。女が戦など無理だと言われると思っていたために、拍子抜けしたように瞬きをした。 「……無理だと言わないんです?」 「言うて欲しいんですか」  歩きながら与三郎の横顔を見やる。するとそれに気付いたのか視線が合った。  いえ、と桜司郎は視線を逸らす。 「ただ、その優しさを全て捨てんといけんですよ。人殺しに対する罪の意識なんてものを感じてもいけん。無情になり切る必要があります」 「そんなこと、」  無理だと言いかけたが、吐き出しかけたところで口を噤んだ。覚悟が足らないと思われたくないのだ。 「やれんのなら、止めておいた方がええ。足でまといになるだけですけえ。……ええですか。戦は自分の感情よりも、集団の目的を最も優先にするもんです。じゃけえ、もし仲間が負傷したとしても、場合によってはその場に置いて行かんといけんのですよ」 「置いて……行く……」 「はい。だって、一人のために集団を潰す訳にゃいかんでしょう」  その言葉は理にかなっている。だが、それはあまりにも寂しい。そうしなければならぬと分かっているからこそ、悲しく思えた。 それ以降は一言も交わさないまま、藤の家へと到着した。以前に来た時よりも全く変わっていない。まるで時を止めてしまったかのようだった。 「ごめん下さい。藤婆おりますか……」  だが、いくら呼び掛けても返事がない。  気付けばあれほど綺麗にしていた庭の木も、枝が好き放題伸びていた。 ──嫌な予感がする。  鼓動が妙な音を立て始めた。最悪の事態すら思い浮かべてしまう。 「藤婆、入りますよッ」  そう叫ぶなり、桜司郎は家へと飛び込んだ。手拭いで乱暴に足を拭くと、居間へと入る。囲炉裏の中の炭はすっかり冷えていた。  少なくとも今日使用した形跡は無い。  昔、薄緑が飾られていた部屋の襖に手を掛けると、一気に引き開けた。  すると、すっかり痩せこけた藤が弱々しく呼吸をしているのではないか。布団の腹部あたりが規則的に上下した。  ただ寝ているのではなく、何かしらの病を患っているか、はたまた衰弱していることは一目瞭然である。  その部屋へと踏み出した足は何処か震えていた。 「ふ、藤婆…………?」  布団の横へと力が抜けたように座る。それに気付いたのか、目蓋がぴくりと動いた。そして重怠そうにゆるりと開く。 「桜花…………」  しわがれた声が優しく鼓膜を叩いた。慈しむようなそれはじんわりと胸へと染み入る。  この時、藤は脚気に冒されていた。 「ああ…………そこ居たんだね……。「桜之丞…………?わ、私は…………」  憑き物が取れたかのように、藤は穏やかに微笑む。それはまるでが


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