• 桜司郎の返事を聞いた沖田

    桜司郎の返事を聞いた沖田は顔を伏せた。長いような、短いような静寂が辺りを包む。  急に胸に大きな風穴が空いたような気分になった。労咳のつらさなど、比にもならぬほどの寂しさと虚しさに襲われる。 ──ああ、何故この子の言葉ひとつでこのようにも胸が掻き乱されるのだ。否定して欲しいなど、なんて浅ましいことを思ったのだろう。この子には土方さんが居るというのに。  すっかり沖田の中では、桜司郎の恋仲は土方だと決め付けられていた。そのような人を安芸で連れ回したり、簪を送ったり、素肌に触れたりしたことを恥ずかしく思った。https://www.scoop.it/topic/carina-by-carina-darling/p/4149282691/2023/12/02/- https://www.easycorp.com.hk/blog/4-benefits-of-incorporating-your-business-in-hong-kong/  https://johnsmith11.journoportfolio.com/articles/#/ 剣術ならば幾らでも己を鍛えれば、勝てぬ相手など居ない。だが、この感情だけは努力だけでは抑え込めないことに気付いた。 「…………そう、ですか。分かりました。これで決心が着いた。有難うございます」 「決心……?」  桜司郎は沖田の言葉を復唱したが、それに返事はない。  恐る恐ると顔を上げれば、その拍子に厚い雲の隙間から白い月が顔を出した。ほんの一瞬だったが、沖田の表情を認識するには充分すぎるもので。  それは酷く傷付いたような、それでいて愛しいものを見るような、儚くて優しいだった。 「……桜司郎さん。戯言だと思って聞いてください。私はね────」  ぴしゃりと何処かで雷が落ちる。雨足は強くなり、言葉をかき消した。  それを聞いた桜司郎は、目尻から涙を零しながら思わず一歩後退る。そして振り返ることなく去っていく沖田の背を呆然と見詰めながら、その場に座り込んだ。  沖田はその足で局長室へ向かう。声を掛ければ、直ぐに雨戸が開いて近藤が顔を出した。 「総司か。夜更けにどうした?まあ、入れ」 「いえ、此処で。……近藤先生。先程のお話ですが、お引き受けします」 「そうか、それは良かった!よくぞ決意した。俺は本当に嬉しいぞ、総司」  心底嬉しそうな表情を浮かべた近藤は、沖田の両肩に手を置く。それを見ながら、沖田は"これで良い"と己に何度も言い聞かせた。 次の日は昨夜の雨が嘘かのように、カラッと晴れた。この昼間は一番組が巡察の担当であり、支度を終えた隊士達が門前に集まる。  山野は横にいる桜司郎を肘でそっと小突いた。 「……なあ、沖田先生と仲直り出来たのかよ?」  その問い掛けに、桜司郎は一瞬だけ目を細める。だが、この優しくてお節介な友へ心配をかけまいと直ぐに笑みを浮かべて頷いた。 「うん、お陰様で」 「……それにしても、何があったんだ?あの沖田先生と桜司郎が喧嘩なんて。二人とも隊でも屈指の穏健派じゃないか」 「……下らないことだよ。もう何とも無いから、忘れて」  そのように返せば、山野は納得行かないように唇を尖らせる。そしてある事に気付き、桜司郎を凝視した。 「……な、何?」  山野はいきなり手を伸ばすと、額へ手を当てる。 「桜司郎、熱があるんじゃないのか?少し熱いような……」  その言葉にドキリとする。原因は既に分かっていた。暖かくなって来たとは言え、雨に打たれ続けたのが悪かったのだろう。ただ、少しだけ怠さを感じる程度であり、隊務へ支障をきたすようなものでは無かった。 「さっき走ったからだと思う。大丈夫だよ」  誤魔化すように、手で顔を仰ぐ。  そうしていると、やがて副長への上番挨拶を終えた沖田がやって来る。それを見た桜司郎は伍長として、その横へ向かった。 「──では、これより一番組!市中巡察へ参る!」  少し高めの、ハッキリとした沖田の声が響く。いつもこの出陣音頭を聞く度に身が引き締まるのだ。 「応!」  勇ましい返答と共に、死番の隊士を筆頭に進む。組長である沖田は真ん中を、桜司郎は


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