• に被った女性がこちらを

    に被った女性がこちらを見ていることに気付く。視線が合うと、女性は会釈をした。

     

     

    「あ……

     

     桜司郎は笑みを浮かべる。https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202312010000/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/ab9fc938fa3bcbc05c792b3dc2b9069d https://ameblo.jp/freelance12/entry-12830864811.html  近くで土方の出立の音頭が聞こえると、前を向いた。歩みを進めながら、後ろ髪を引かれるように再度振り返る。そしてそっと小さく手を振った。

     

     それを見た女性は我慢出来ないといった風に影から一歩出ると、頭の手拭いを取る。そして背筋を伸ばして頭を下げた。

    凛としたそれは、まるで武家の妻が戦場へ出る夫の見送りをしているようにも見える。

     

     

     胸がじんわりと熱くなり、桜司郎は思わず立ち止まった。

     

    「わッ!鈴木〜、どうしたの?いきなり立ち止まるなんて」

     

    「ご、ごめんなさい。何でもありません」

     

     後ろを歩く藤堂とぶつかりかけて足を進める。何歩か進んだところで横目で見遣ると、既にそこには女性の姿は無かった。

     嫁入りをする女性が他の男の見送りをするなど、あまりにも体裁が悪い。その危険を顧みずに来てくれたのだと思うと、それだけで満たされた気持ちになった。

     

     

    ──有難う、歌さん。さようなら。どうかお幸せに。

     

     

     桜司郎は心の中でそう呟くと、前を向いて足を進める。 江戸を経って何日目だろうか。一行はの草津宿まで進み、明日には京入り出来るだろうというところまで来ていた。大所帯故に、一つの旅籠で収まり切れず複数のそれに分かれる。

     

     土方は予告通り、伊東や桜司郎と部屋を共にした。何処と無く気まずさが漂ったが、幾日も顔を付き合わせていれば、簡単な会話くらいは交わされるようになっていた。

     

     

     その日は雨の夜だった。五月上旬ともなれば緑の色もより濃くなる。雨が緑を伝い、土に染みてはそれを風がう。寝支度を整えた桜司郎は窓のから顔を出し、深呼吸をした。春が終わりを告げる匂いが肺を満たす。

     

     明日には西本願寺に居ると思うと、何ともそわそわしたような気持ちになった。山野、馬越、松原、そして沖田に会える。前日に楽しい事を控えた子どものようにる気持ちを抑えつつ、桜司郎は布団へ横になった。

     

     寝なくてはと思えば思うほど、寝られないのがである。そんな事をしていると、最後に湯浴みを終えた土方が部屋に戻ってきた。

     

     そして先程の桜司郎と同じように、窓の桟に肘を立てて座ると、珍しくさっさと寝ずに書き物をしている伊東をする。

     

     

     その視線に気付いた伊東は顔を上げた。目が合うと、土方は気まずそうに頭を掻く。そして意を決したように口を開こうとした。だがそれよりも早く伊東が言葉を発した。

     

    「土方副長殿」

     

    「何だ」

     

     

     眠れない桜司郎は二人に背を向けるようにして横になっている。逆を向いていなくて良かったと思いつつ、空気に徹した。

     

     

    「江戸では、呼びに来て頂くまで試衛館へ出向かず申し訳ありませんでした」

     

     伊東は居住まいを正すと、小さく頭を下げる。それに土方は少しだけ驚いた。

     

    が危篤だってンだから仕方ないだろう。気に病むことではない」

     

    「いえ……。実はそれは妻の狂言でございました」

     

     狂言、つまり嘘なのである。伊東は辛そうに顔を伏せた。そして、事の顛末をぽつりぽつりと話し始める。

     

     妻のウメは伊東が上洛することにそもそも反対していた。伊東道場を継いで婿入りした立場であるから、上洛即ち道場の閉鎖を意味している。離縁し、ウメに新たな婿を迎えさせるという話しも挙がったが、愛情の深かった夫婦であったためにその話は有耶無耶のままとなった。

     最終的には伊東の志の熱さを優先し、離縁せずにウメとその長女であるエイを江戸に残したまま、伊東のみが単身で上洛した。

     

     

     文で何度もやり取りはしたものの、江戸にも新撰組の風評は池田屋事変を中心に伝わっており、


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