• 翌日。四人は連れ立っ

     翌日。四人は連れ立って試衛館に戻った。山南の件に関しては若干のりを残したまま、藤堂が土方に謝罪を入れる形で丸く収まる。

     

    その日のうちに今回の東下の目的である隊士募集の段取り、つまり面接の日程をさっさと決めてしまえば、後は暇になった。

     

     

    藤堂は深川の伊東道場を見に行くと云う。流石に一人で行かせたくないと渋った土方を安心させるように、そのお供を斎藤が買って出た。

     

     すると、必然的に土方と桜司郎だけが試衛館に残される。桜司郎はたまと遊んで過ごそうとしていたが、土方が突然話しかけて来た。

     

    「おい。どうせ暇だろう。京への土産を見るから俺に付き合ってくれよ」

     

     

    ぶっきらぼうな言い方だが、それはただの名目で、実際は少しでも記憶の足しにならないかと観光をするつもりである。

     

    「あ分かりました。ぜひご一緒させて下さい」

     

     沖田や仲の良い山野らへ土産を買いたいと思っていた為に、桜司郎は快諾した。

     

     

     試衛館を出て少し歩くと、桜司郎は足を止める。そしてに振り返った。近くに植えてあった柳が揺れる。

     

    「どうした」

     

    怪訝そうに土方が問い掛けると、桜司郎は首を傾げる。背後にじっとりとするような視線を感じたのだ。

     

    「何だか……見られているような気がして。でも気の所為だったようです」

     

    それを聞いた土方は何故か得意げに口角を上げた。

     

     

    「仕方ねえ。見目の良い俺らが歩いてんだ。町娘もほっとかねえよ」

     

    その言葉に、桜司郎は面を食らったような表情で土方を見上げる。土方歳三という男はこの様にも砕けた人物だっただろうか。

     

    やはり江戸の気風に感化されつつあるのか、土方の雰囲気は柔らかかった。山野や馬越にも見せてあげたいと桜司郎も釣られて口角を上げる。

     

     

    「京と違って、俺らを狙ってくる奴ァいねえしな。もっと肩の力を抜いて良いぜ」

     

    確かに先程の視線は殺意を帯びた物では無かった。土方の言う通りに町人の視線なのだろうか、と桜司郎は自分を納得させる。

     

     

     たわいの無い会話をしながら、半刻ほど歩けば日本橋に辿り着いた。

    五街道の起点であり、江戸で最も繁盛している町と呼ばれる程に人通りも多く一帯は店で溢れ返っている。

     

     

    「凄い人ですね。……わあ、良い匂い」

     

     醤油の香ばしい匂いが風に乗って鼻腔を擽った。桜司郎が思わず鼻をすんすんと動かせば、土方は笑う。

     

    「お前は犬か。腹が減ってんならそう言えって。飯にしよう」

     

    返事をするように、腹の虫がグウと小さく鳴った。黙っていれば喧騒に紛れて分からないが、桜司郎は顔を赤くして腹を抑える。

     

    それを見た土方は笑みを深くした。そして香りの大元である"江戸前大蒲焼"と書かれた鰻屋の暖簾を潜る。

     

     

    「鰻だ。私大好きです!」

     

    「そうか。俺もだよ。江戸の鰻は京とは違うからなァ。やはり江戸の味が一番だぜ」

     

     

     京は鰻を腹開きにするが、対して江戸は背開きにしていた。これは江戸が将軍のお膝元であり、武士の街であるため腹開きだと切腹を連想させ縁起が悪いと云った理由からである。

     

    また、味付けも江戸と京では大いに異なっていた。京の人々は薄味を好むが、江戸は濃い味付けが多いという。

     

     

    濃口醤油の匂いと共に二人の前に鰻飯が運ばれてきた。早速、一口食べればたちまち桜司郎は笑顔になる。

     

    「美味しいッ!副長、https://ameblo.jp/freelance12/entry-12830476428.html https://www.liveinternet.ru/users/freelance12/post502250605// https://www.bloglovin.com/@freelancer10/12242839  これ美味しいです」

     

     

    ほくほくと程よく焼かれ、ふわっとした身が口の中で解れていった。そこに濃いタレが絶妙に絡み、空っぽだった胃に次々と染み込ませていく。


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