• そう言われ、土方はバツ

    そう言われ、土方はバツが悪そうにそっぽを向いた。腕試しにもなり、良い行商相手にもなり一石二鳥だったのではないか。荒々しいが、土方には商才がある気がすると桜司郎は感心した。

     

    「偉そうな口利いておきながら、アイツらが弱ェのがいけねえよ」

     

    ……ですが、そんな貴方ももう泣く子も黙る新撰組の副長だ。ご実家も誇らしいでしょう」

     

     

    斎藤の打算のない言葉に照れ臭くなったのか、土方は無言のまま耳を赤くする。喧嘩や女との痴情のもつれ等の決して良いとは言えない揉め事ばかり起こして来たが、やっと遅咲きながらも胸を張って実家へ帰れるようになったのだ。

     

    土方の胸に感慨深さがじわじわと滲みつつも、これ以上褒められるのは居心地が悪い、と土方は茶を飲み干し立ち上がる。

     

    「よ、余計なことくっちゃべってると、日が暮れちまうぜ。早く行くぞ」

     

    その様子を見た斎藤と桜司郎は目を合わせ、意味ありげに笑った。

    桜司郎の中にあった緊張と畏れも、疲れと共に解れていく。

     

     

    再度歩みを進めていると、土方が口を開いた。

     

    「おい、斎藤は分かっていると思うが。鈴木は姉の"とく"には気を付けろよ。やたらと勘が鋭いンだ。嘘もッ嫌いで口も達者でな、流石の俺でも頭が上がらないくらいだ」

     

    「土方副長はお姉さんがいるんですね」

     

    桜司郎の言葉に土方は頷いた。土方には九人の姉や兄がおり、中でもという二番目の姉と仲が良かった。日野の名士であり、今や新撰組の良き支援者であるに嫁ぎ、既に子も成している。

    両親はしており、とくは彼の母親代わりだった。血筋なのか、弟を守らなければならないという境遇のせいか、きっぱりと物事を言う女性だった。

     

     

    「優しいんだが、怒るとおっかねえよ」

     

    そう言って笑いながら肩を竦める土方は、鬼の副長の仮面はすっかり外れている。夕陽に照らされて、影が伸びる頃に石田村へ踏み入れる。多摩川沿いにそこはあった。

     

     

    土方は、行き交う人々に"歳さん"と親しみを込めて呼び掛けられており、桜司郎は驚きを隠せずにいる。

    江戸に来てからの土方であれば納得ものだが、京での土方はむしろ遠巻きに見られているからだ。

     

    「ちょっくら声を掛けてくるからよ、お前らはそこで待っててくれ」

     

     

    本日の宿所として頼るつもりの、"日野宿本陣"に到着する。土方は先に中へ入っていき、斎藤と桜司郎は建物の前で立っていた。

     

    ……驚いたか」

     

    「え……あ、そう……ですね」

     

    斎藤に声を掛けられた桜司郎は、しどろもどろになりながらも肯定する。斎藤は笑みを零すと土方が入っていった入口を見た。

     

    「本当の副長は、土方さんはああいう人だ。誰からも好かれる、良い人さ」

     

     

    その声色には全面的な信頼が込められている。

    やがてそう時も経たないうちに土方が戻り、二人に家へ入るように促した。

     

    本陣の入口には梅の花が咲き誇り、門を潜るとしい香りが鼻腔をくすぐる。

     

    式台には気の強そうな目鼻立ちのハッキリとした美しい女性と、優しげだが威厳を感じる男性が出迎えるように立っていた。

     

    一目見て、土方の姉だと分かる程に面影がある。

     

     

    ……ご無沙汰しております、山口です。今は斎藤と名乗っておりますが」

     

    「は、初めまして。新撰組隊士の鈴木桜司郎と申します。お世話になります」

     

     

    斎藤に続いて、桜司郎も頭を下げた。

     

    「遠路遥々、https://lefuz.pixnet.net/blog/post/120767725 https://johnsmith.e-monsite.com/blog/--2.html https://www.evernote.com/shard/s330/sh/9983c5f8-741e-e3ef-036e-246e1b984b61/yAN4BwCQnR98HYzF4DmWY1YGKpFLWB-z7phVMelgpyZaTLBOKKCGOjunFw  よくいらっしゃいましたね。お疲れでしょうから、我が家だと思って寛いでください。湯は沸かさせてますので」

     

    にこやかに出迎えを受けると、足を洗って客用の部屋に案内される。

     

     

    刀やら荷物やらを置き、旅装束を解くと、どっと疲れが湧いてきた。だが休む間も無く直ぐに


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