• 迫り合いをしている。

    迫り合いをしている。  大人が子どもの相手をしているように、力の差は歴然であった。しかし、なんたって高杉は茶屋の娘を庇いながら、その上道の真ん中での立ち回りであるから分が悪い。 https://mathewanderson.e-monsite.com/blog/-.html https://www.evernote.com/shard/s514/sh/4ab51ec6-7fd2-8ede-ffac-f69686c8f41f/IWykVy6LZxZtRBFuxkReg9Z-F1BL7FFwzIuVE_hawO7dHtmrvF3z7cx8WA https://blog.udn.com/29339bfd/180016042 浪士が振るった刀の切っ先が、高杉の頬の皮を薄く掠めた。血筋がぷくりと浮かぶ。 「た、高杉さん!!……やめてぇッ!」  それを見た桜花は悲鳴を上げ、思わず店の中から外へ躍り出てしまった。足でまといが増えたところで、更に高杉の重みになるだけだと分かっていたのに。それに気付いた時には既に遅かった。  戦いにおいては、弱そうな方から狙うというのが定石である。それに則るように、浪士が一人走ってきた。 ──終わりだ。私はこんな訳の分からないところで死ぬのか。  桜花は恐怖に目を見開く。 「ぃ、やだ、死にたく、ない……」 ──私に勇気があれば。 「桜花ッ!逃げろ!」  高杉の声が響いた。だが、足が竦んで動けない。 ──私に力があれば……!  もう駄目だと思わず刀の柄を握った。その時である。 触れた箇所から身体がカッと熱くなった。、急に心は落ち着きを取り戻していく。  目をスッと細めると、桜花は視界の端に柄の太い竹箒が転がっているのを捉えた。そして着物の袖で自身の目元を隠すなり、右足を後ろへ振り上げ、力いっぱいに地面を蹴る。 「うわッ!?」  すると砂埃が立ち、浪士の目にそれが直撃した。たまらず反射的に刀を落とすと、目を擦ろうとする。桜花は素早く竹箒を拾うと、その胴を薙ぎ払った。  蛙が潰れたような声を漏らしながら、身体を二つに折り、浪士は地に伏す。  おお、とどよめきが観衆から起こった。  桜花は着物の袖を捲ると、竹箒を上段に構える。高杉は驚きの表情でこちらを見ていたが、すぐに心得たと言わんばかりの不敵な笑みを浮かべた。 「このッ──」  他に控えていた浪士は抜刀したまま上段に構え、振り下ろす。だがその太刀筋はすっかり見切られており、桜花は横へ飛び退いて難なく交わした。次に間髪入れずに浪士の手首を打ち、刀を落としたところで脛を打つ。  一方で対峙する浪士が減った高杉は身軽になったせいか、圧倒的な力で次々と制圧していった。 「高杉さん!」  刀の峰を肩に乗せ、にんまりと口角を上げる高杉の元へ桜花が駆け寄る。 「桜花。よう恐れもせんと戦ったのう。君ァ……ほんまに面白い!」  あれほど怖がっていたというのに、まるで羽化した蝶のように雰囲気を一変させた桜花へ高杉はより興味を寄せた。 「戦っ……?そうだ、私、どうして」  その賛辞に桜花は先程の自分の行動に対して混乱する。元々剣術を嗜んでいたとはいえ、防具も付けない相手と対峙したのは初めてだった。それだと言うのに、今は恐れよりも興奮に近い感情だけが残る。  ふと、小路の影から浪士とは比べ物にならない程の気迫を感じた。高杉もそれに気付いてか、睨みを利かせる。 「……そこに居るんは誰じゃ。斬られとう無かったら出て来い」  その声に応じたのか、一人の男が姿を見せた。すらりと背が高く、目鼻立ちはハッキリとしており、まさに眉目秀麗という言葉が相応しい。  その人物を見るなり、高杉は一気に警戒を解き刀を納めた。


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